伝統のモチーフと所作を食卓に
筆に墨をつけて穂先を整えるように、醤油を払ったり、たれを切ったり。仕切りで用途を分けるのではなく、硯のようにひとつのうつわの中に高低差をつけることで生まれる2つのスペースに、それぞれの役割を持たせました。硯の丘(墨を磨る部分)に料理を、海(墨を溜める部分)にソースや薬味を添え、ワンプレートで愉しめます。プレートオーバルは、餃子や生春巻きを並べるのにちょうど良いサイズ感。焼き魚やお刺身はプレートロングがおすすめです。
プレート面自体に高低差があるため、プレートの天面(丘の部分)が重みで垂れてこないよう、“トチ”と呼ばれる土台となるもので支え焼き上げています。
透明感に宿る色彩と表情
硯は石を削り出してつくられますが、suzuriはうつわとしての使いやすさを求めて、薄いプレートで硯の丘と海を表現しています。
自然豊かな、熊本県の天草地方で採掘される粘土の鉱石「天草陶石」を原料とした波佐見焼。鉄分の含有量によって分類される陶石ですが、天草陶石はその美しい白さが特徴です。
透明釉と呼ばれる透け感のある釉薬の色味が映えるのは、天然無垢な白磁をベースにしているため。海(墨を溜める部分)や高台、縁のアール部分には、あえて釉薬が溜まるよう「溜め掛け」という手法を用いています。
釉溜まりの濃淡はひとつひとつ異なり、ニュアンスのあるうつわの表情を生み出しています。
現代の食卓に活きる、硯のカタチ
柔和なフォルムの白磁器に釉薬を溜め掛けすると、やはりどこか和食器の雰囲気が強くなりますが、さまざまな料理と調和し現代の食卓に馴染むように、柔らかさの中にもエッジを効かせ凛としたフォルムを目指し試行錯誤。
縁の立ち上がりや厚み、アールの付け方などの微調整を重ね、天草陶石の透明感のある美しさと温もりのある釉溜まりの表情を活かしながらも、洗練されたモダンなうつわに仕立てました。
プレート1枚で2つの役割を担っているので、食卓がすっきりとまとまります。